爺様の愛



いづでったが、婆様が入院した時のこと。

それまんで婆様の入院は何度があったばって、大体2〜3週間で退院してあった。

ところがその時は1ヶ月を超えでも退院でぎねがった。

爺様は見舞いさも行がねんで普段どおり毎日畑さ出であった。

母が「爺様、おばちゃの見舞いさ連れで行ぐが?」って言っても

「その内退院すべ!」の一転張り。

「この忙しい時に入院だのしてへ!」とブツブツ。

なんぼ冷て〜んだば!ってちっと腹立たしぐ思ってあった。

ある日の夕方、そろそろ暗ぐなるって時になっても爺様が畑がら帰ってこねがった。

心配した親父ど母親は、田んぼや畑、神社、お寺と、たんげ探したばって見つからない。

なんが事故さでもあったべが?って思ってら時に叔父がら電話が。

「爺様、病院さ来てらや。歩いてきたんだど。」と。

当時その叔父は市内の病院に勤務していて婆様もそごさ入院してあった。

その病院は実家がら車で30分はかがる距離。

それば爺様は歩いて行った。

すぐ車で病院さ向がって、爺様さ「なして黙って来たのや」って聞くと、

「婆様、どしてらべど思ってや。」と一言。

手には自分で握った「みそおにぎり」があった。

「それ、爺様の昼飯のにぎり飯だな?」と聞くと

「なんも。」と低い声で。

どうやら病院でお粥ばり食べさせられでるど思った爺様は、婆様にご飯ば食べさせようと持っていったらしい。

親父はそれがすぐわがったようで、爺様の手がらにぎり飯ば取って、婆様さ渡した。

婆様は「爺様、みそのにぎり飯、食いてがったじゃ〜」と。

爺様の愛情が痛いほど伝わってきて、病室はしばらぐ静かさなってだ。

爺様はこの1ヶ月、しげねがったんだべな〜。

その後1週間ほどで婆様は退院。

あれがらしばらぐは照れくさそうな爺様でした。



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